栄養士監修

60・70代の食事と体づくり
カロリー・タンパク質不足を防ぐヒント

高齢になると「食が細くなった」「体重が落ちてきた」というのはよくあることです。しかしカロリー不足・タンパク質不足を放置すると、筋力低下・骨折リスク上昇・免疫機能低下など、生活の質に直結する問題につながる可能性があります。

📋 栄養士監修|2025年更新
Section 01

なぜ高齢者はカロリー・タンパク質不足になりやすいのか

📌 このセクションのポイント
  • フレイル・サルコペニア・骨折リスクなど、不足が招く問題は生活の質に直結する
  • 消化吸収低下・食欲中枢の変化・口腔の問題が主な原因
  • 体重が半年で2〜3kg落ちたら早めに相談を

60代・70代になると、体の変化によって知らないうちに栄養が不足しやすくなります。「食欲はある」と感じていても、実際に摂れている量が減っていることは少なくありません。

⚠️ 高齢者の栄養不足が引き起こす可能性があること
フレイル(虚弱):筋肉量・筋力・身体機能が低下した状態。転倒・骨折・寝たきりへのリスクが高まるとされています。

サルコペニア:加齢による筋肉量の減少。タンパク質不足が大きな要因のひとつで、立つ・歩くといった日常動作に影響する場合があります。

免疫機能の低下:タンパク質は免疫細胞の材料でもあるため、不足が続くと感染症にかかりやすくなる可能性があります。

骨折リスクの上昇:カルシウム・タンパク質・カロリーが不足すると骨密度の維持が難しくなり、転倒時の骨折リスクが高まる可能性があります。
📉 不足しやすい3つの主な原因

① 消化吸収機能の低下:胃酸の分泌が減り、同じ量を食べても栄養の吸収効率が若いころより落ちることがあります。

② 食欲中枢の変化:加齢とともに「おなかがすいた」というシグナルが弱くなり、食事量が自然に減りやすくなります。

③ 歯・口腔の問題:咀嚼力の低下や義歯の不具合で、肉・魚・根菜など栄養密度の高い食品を避けるようになるケースがあります。

💡 「食欲がない日が続く」「体重が半年で2〜3kg落ちた」という場合は、かかりつけ医や管理栄養士に相談することも選択肢のひとつです。
Section 02

カロリーを効率よく補える食材一覧

📌 このセクションのポイント
  • 少量でもカロリーが高い食材(油・ナッツ・卵・チーズ)を意識的にプラスする
  • 「ジャンクフード」ではなく栄養密度の高い食材を少量追加する工夫が長続きする
  • アボカド・ごま油・バナナなど手軽に使えるものが多い

量をたくさん食べられない方でも、食材の選び方次第でカロリーを効率よく補うことができます。少ない量でも高カロリー・高栄養な食材を意識的に取り入れてみましょう。

食材目安量エネルギーポイント
アボカド1/2個(75g)約135kcal良質な不飽和脂肪酸が豊富。サラダやご飯に混ぜるだけで手軽にカロリーアップできます。
ごま・ごま油大さじ1(13g)約115kcal少量で高カロリー。和え物や炒め物に加えるだけで栄養価が上がります。
オリーブオイル大さじ1(14g)約124kcal良質なオレイン酸を含み、動脈硬化予防の観点からも注目される油。
ナッツ類ひとつかみ(30g)約180〜200kcal間食として取り入れやすく、良質な脂質・ビタミンEも補えます。塩分の少ないものを。
全卵1個(60g)約90kcalタンパク質・脂質・ビタミンB群をバランスよく含む。1日1〜2個を目安に。
さつまいも中1/2本(100g)約130kcal糖質・食物繊維・カリウムを含み、腹持ちがよく間食にも向いています。
バナナ1本(100g)約86kcal手軽で消化がよく、糖質・カリウム・ビタミンB6を含みます。朝食の補完に。
チーズ(プロセス)1枚(18g)約60kcalカルシウムとタンパク質を同時に補えます。調理不要で手軽です。
牛乳・豆乳コップ1杯(200ml)約130kcal飲むだけでカルシウム・タンパク質を補給できます。
ごはん(白米)茶碗1杯(150g)約234kcal消化がよく手軽なエネルギー源。食欲がないときはおかゆ形式にすると摂りやすいです。
Section 03

タンパク質を効率よく補える食材一覧

📌 このセクションのポイント
  • 体重60kgなら1日60〜72gが目安(体重1kgあたり1〜1.2g)
  • 「まとめ食い」より朝・昼・夜に20〜25gずつ分散する方が効果的とされている
  • サバ缶1缶で約38g、鶏むね100gで約23g — 缶詰・肉を使いこなすのが近道

筋肉の維持・免疫機能・ホルモン生成など、タンパク質は体の多くの働きに関わっています。60代以降は吸収効率が落ちるため、意識的に毎食補うことが大切とされています。

食材目安量タンパク質量特徴・取り入れ方
鶏むね肉(皮なし)高効率100g約23g高タンパク・低脂質の代表格。ゆでてほぐすと冷凍保存もでき、幅広く使えます。
サバ水煮缶手軽1缶(180g)約38gEPAやDHAも豊富。開けるだけで使える手軽さが魅力。味噌汁に入れるだけでも一品に。
鮭(焼き)1切れ(100g)約22gタンパク質とビタミンDを同時に補えます。骨の健康にも関係します。
1個(60g)約7g消化吸収率が高く必須アミノ酸をバランスよく含みます。茶碗蒸しなど食べやすい形も豊富。
納豆1パック(45g)約7.5g植物性タンパク質+ビタミンK2。朝食に取り入れやすい食材です。
木綿豆腐1/2丁(150g)約10g炒め物・みそ汁・煮物と使い回しがきく万能食材です。
ギリシャヨーグルト(無糖)1個(100g)約10g通常のヨーグルトよりタンパク質が豊富。カルシウムも補えます。
しらす・小魚カルシウムも◎大さじ2(20g)約8gカルシウムとタンパク質を同時に摂れます。ご飯にのせるだけと手軽です。
高野豆腐(乾燥)1個(20g)約10gタンパク質が凝縮。煮物にすると軟らかく咀嚼力が落ちた方にも向いています。
枝豆(冷凍)1/2カップ(65g)約7g植物性タンパク質・食物繊維・カリウムを含みます。冷凍のまま使えて保存もきく優秀食材。
💡 タンパク質は「まとめ食い」より「分散摂取」が効果的とされています

1食に大量に摂っても体が吸収・利用できる量には上限があると言われています。朝・昼・夕それぞれ20〜25g程度ずつ摂ることが筋肉の維持に効果的とする研究報告があります。

例:朝に卵2個+納豆1パック(約22g)、昼にサバ缶(約38g)、夕に鶏むね100g(約23g)→合計約83g

⚠️ タンパク質の過剰摂取は腎臓への負担につながる可能性もあります。腎機能に不安がある方はかかりつけ医に相談してください。
Section 04

カルシウム・水分・ビタミンDも見落とさずに

📌 このセクションのポイント
  • カルシウムの吸収にはビタミンDが必要 — 鮭・干ししいたけ・日光浴がカギ
  • 高齢者は「かくれ脱水」に注意 — のどが渇かなくても1.5〜2L/日を目安に
  • 牛乳コップ1杯でカルシウム約220mg補える

カロリーとタンパク質に注目が集まりがちですが、カルシウム・水分・ビタミンDも60・70代の体づくりに欠かせない栄養素です。

🦴 カルシウムとビタミンD:骨の健康を支えるペア

カルシウムは骨の主成分ですが、腸での吸収にはビタミンDが必要とされています。ビタミンDは日光に当たることで皮膚でも合成されますが、外出機会が少なくなりがちな高齢者では不足しやすい傾向があります。

カルシウムを補いやすい食材:牛乳(コップ1杯で約220mg)、チーズ(スライス1枚で約130mg)、ヨーグルト(1個で約120mg)、しらす(大さじ2で約60mg)、ひじき・切り干し大根など。

ビタミンDを含む食材:鮭・さんま・いわし・きくらげ・干ししいたけなど。1日15〜30分程度の日光浴(手や顔に当てるだけでもよいとされています)も参考になります。

💡 骨粗しょう症の予防・治療中の方は、医師の指導のもとでサプリメントを活用するケースもあります。
💧 水分:「のどが渇かない」が高齢者の落とし穴

加齢とともに体内の水分量が減り、のどの渇きを感じにくくなります。そのため気づかないうちに脱水状態になる「かくれ脱水」が高齢者に多いとされています。夏場だけでなく冬の暖房で乾燥した環境でも同様です。

目安:1日の水分摂取量は食事からの水分も合わせて1.5〜2リットル程度が一般的な目安とされています。ただし心臓・腎臓に疾患がある方は医師の指示に従ってください。

取り入れやすい工夫:起床後・食事ごと・就寝前にコップ1杯の水やお茶を飲む。温かい麦茶・ほうじ茶・味噌汁なども水分補給になります。

⚠️ カフェインを多く含むコーヒーや濃い緑茶は利尿作用があるため、大量に飲む場合は水やお茶で補うとよいでしょう。
Section 05

運動はやればいいわけではない:血圧・動脈硬化・プラークとの関係

📌 このセクションのポイント
  • プラーク(血管内のコレステロール蓄積)が破れると血栓→心筋梗塞・脳梗塞リスクがある
  • 息を止めてふんばる動作(バルサルバ動作)は血圧を急激に上げるので要注意
  • シニアには「会話できる程度」の有酸素運動+低負荷の筋トレが向いている
  • 早朝・入浴直後・空腹時・脱水時の激しい運動は特に避けたい

「健康のために運動しましょう」とよく言われますが、高齢者にとっては運動の種類・強度・タイミングを間違えると、かえって体に負担をかける場合があります。特に血圧・動脈硬化・プラークとの関係を理解しておくことは大切です。

⚠️ 過度な運動が高齢者の血管に与えるリスク
動脈硬化とプラーク(粥腫):血管の内壁にコレステロールなどが蓄積した「プラーク」は動脈硬化の主な原因のひとつです。過度に血圧が上がるような激しい運動は、このプラークが破裂し、血栓ができて心筋梗塞・脳梗塞につながるリスクが高まるとされています。特に高血圧・糖尿病・高脂血症の既往がある方は注意が必要です。

血圧の急激な上昇(バルサルバ動作):重い荷物を持ち上げる・息を止めてふんばるような動作は、一時的に血圧を大幅に上昇させます。これが動脈のプラークに物理的な負担をかけることがあります。

運動後低血圧:激しい運動のあと血圧が急激に下がり、ふらつき・転倒につながるケースもあります。
🚶 シニアに向いた「適度な運動」の考え方

有酸素運動を中心に:ウォーキング・水中ウォーキング・自転車(エルゴメーター)など、息が少し弾む程度(会話ができるくらい)の有酸素運動が推奨されることが多いです。1回30分・週3〜5回程度が目安とされています。

筋トレは「低負荷・多回数」で:重い重量を使った筋トレは血圧を急上昇させるリスクがあります。シニアには軽い負荷でゆっくり行うスロートレーニングや、椅子に座ったまま行える体操が向いているとされています。

ストレッチ・バランス訓練:転倒予防の観点から、足腰の柔軟性を保つストレッチや片足立ちなどのバランス訓練も大切とされています。

💡 運動を始める前に、かかりつけ医に「どの程度の運動なら問題ないか」を確認しておくと安心です。特に心臓疾患・高血圧・糖尿病の既往がある方はご注意ください。
⛔ 特に注意したい運動のシーン
・早朝の激しい運動:起床直後は血圧が高くなりやすい時間帯です。朝一番の激しいジョギングや筋トレは避け、軽いストレッチから始めることが推奨されています。

・入浴直後の運動:血管が拡張した状態での激しい運動は血圧変動を招く可能性があります。入浴後30分以上空けてから。

・空腹時・食後すぐの運動:空腹時の激しい運動は低血糖を招く場合があります。食後は30分〜1時間程度空けてから行うほうがよいとされています。

・脱水状態での運動:水分不足のまま運動すると血液が濃くなり血栓リスクが高まる可能性があります。運動前後の水分補給を習慣にしましょう。
Section 06

食欲が落ちてきたときの工夫

📌 このセクションのポイント
  • 香り・盛り付け・食器など「食べる楽しさ」を高める工夫が食欲回復につながることがある
  • 3食そろえることにこだわらず、少量高栄養を意識する
  • 食べにくい場合は歯科・口腔ケアの見直しも有効

「最近あまり食べられない」というのは、60・70代の方からよく聞かれるお悩みのひとつ。無理に食べようとするより、少しずつ楽しみながら食を整えるヒントをご紹介します。

Section 07

一人暮らしでも取り入れやすい食事のヒント

📌 このセクションのポイント
  • サバ缶・冷凍食品・ナッツなど「保存できる高栄養食材」をストックしておく
  • 蒸し鶏を週1回まとめて作ると3〜4食分のタンパク源になる
  • 配食サービス・自治体福祉サービスの活用も選択肢

一人分の食事は手間がかかりやすいですが、少しの工夫で毎日の食事をシンプルに整えることができます。

🍱 まとめて作り置きする

蒸し鶏・煮物・ゆで野菜などを週1〜2回まとめて作っておくと毎食の準備がラクになります。蒸し鶏1回分(鶏むね300g)で3〜4食分のタンパク質源になります。

🥫 缶詰・冷凍食品を賢く使う

サバ缶・ツナ缶・冷凍ほうれん草・冷凍枝豆などは長期保存できてすぐ使えます。サバ缶1缶でタンパク質約38gを手軽に補えます。

🛒 配食サービスを活用する

シニア向けの配食サービスはカロリー・栄養バランスを考慮して設計されているものが多く、調理の手間も省けます。自治体の福祉サービスとして提供している場合もあります。

☕ 間食も栄養源として活用する

ヨーグルト・チーズ・ナッツ・小魚など栄養密度が高い間食で補う方法もあります。ナッツひとつかみ(30g)でカロリー約180〜200kcal+良質な脂質・ビタミンEを補えます。

Q&A

よくあるご質問

食欲がなくて1日2食になってしまいます。問題ですか?
1日2食でも1食あたりの栄養密度が高ければ必要量を補える場合があります。ただし長期間にわたってカロリー・タンパク質が不足するとサルコペニア(筋肉量の減少)につながる可能性があります。2食の場合は特にタンパク質を意識して各食に取り入れ、間食でも補うことを検討してみてください。
コレステロールが心配で卵を控えていますが、どうすればよいですか?
卵のコレステロールについての考え方は近年変わってきており、健康な方が1日1〜2個食べてもコレステロール値への影響は比較的小さいとする研究が多くあります。ただし脂質異常症の治療中の方や医師から制限を指示されている方は指示に従ってください。
血圧が高めなのですが、ウォーキングはしてもよいですか?
一般的に、軽〜中程度の有酸素運動(会話ができる程度のウォーキングなど)は継続することで血圧の管理に良い影響をもたらす可能性があるとされています。ただし高血圧の程度・服薬状況によって適切な運動強度は異なります。運動を始める前に必ずかかりつけ医に相談することをおすすめします。
プロテインドリンクを飲んでも大丈夫ですか?
タンパク質を食事で十分に摂れない場合の補助として活用することは一般的に問題ないとされています。ただし腎機能に問題がある方はタンパク質の過剰摂取が腎臓への負担になる可能性があるため、医師に相談の上で使用してください。
動脈硬化が心配です。食事で気をつけることはありますか?
飽和脂肪酸(バター・ラード・脂身の多い肉)を控えめにして不飽和脂肪酸(オリーブオイル・青魚・ナッツ)を取り入れること、塩分を控えること(1日6g未満が目標とされています)、食物繊維を豊富に摂ること(野菜・きのこ・海藻・豆類)などが一般的に推奨されています。詳しくはかかりつけ医や管理栄養士にご相談ください。
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