本当に葬儀代がない人はどうする?葬祭扶助制度と「福祉葬」を解説
「葬儀代を本当に用意できない」——そんな悩みを抱える方は、決して少なくありません。この記事では、まず生活保護を受けていなくても使える現実的な対処法から、それでも足りない場合の最終手段である公的な「葬祭扶助制度」まで、順を追ってわかりやすく解説します。
生活保護でなくても使える、費用を抑える方法
葬儀費用が足りないと感じたとき、多くの方がすぐに公的支援を思い浮かべますが、実は生活保護を受けていなくても使える選択肢がいくつかあります。まずはこちらから検討してみましょう。
直葬(火葬式)で費用を大幅に抑える
通夜・告別式を行わず、火葬のみで済ませる「直葬(火葬式)」という形式があります。一般的な葬儀の何分の一かの費用で済むことが多く、生活保護の有無に関係なく誰でも選べる正式な葬儀の形です。
自治体の「市民葬・区民葬」プランを使う
多くの市区町村では、地域の葬儀社と提携して低価格の葬儀プランを住民向けに用意しています。「市民葬」「区民葬」といった名称で、一般的な葬儀より費用を抑えられることが多いので、まずはお住まいの自治体の窓口やホームページで確認してみてください。
複数の葬儀社から見積もりを取る
急いでいる状況では1社にすぐ決めてしまいがちですが、2〜3社から見積もりを取るだけで、総額に数十万円の差が出ることがあります。多くの葬儀社は無料で事前相談・見積もりに対応しています。
香典を受け取るという選択肢
「家族葬だから香典は辞退する」という考え方が広まっていますが、香典を受け取ることは決して失礼ではありません。香典辞退は義務ではなく、あくまで選択肢のひとつです。
香典は本当に助けになる?費用を試算してみる
香典を受け取ると、通夜振る舞いや香典返しといった費用も同時に発生します。「参列者を増やせば増やすほど得になる」という単純な話ではないため、実際の収支を試算してみましょう。
以下は、香典1人あたり10,000円、通夜振る舞い1人あたり4,000円、香典返し(当日返し)1人あたり2,500円、葬儀プランの固定費(式場・祭壇・棺・人件費など)を600,000円とした場合の目安です。実際の金額は葬儀社や地域、料理のグレードなどによって変わります。
| 参列者数 | 香典収入 | 変動費 | 差引 | 総費用 | 自己負担額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 30人 | 300,000円 | 195,000円 | +105,000円 | 795,000円 | 495,000円 |
| 60人 | 600,000円 | 390,000円 | +210,000円 | 990,000円 | 390,000円 |
| 100人 | 1,000,000円 | 650,000円 | +350,000円 | 1,190,000円 | 250,000円 |
この試算からわかるのは、参列者が増えるほど葬儀全体の総費用は膨らむものの、香典収入がその増加分を上回るペースで入ってくるため、遺族の実質的な自己負担額はむしろ小さくなっていくという点です。ただしこれは香典を包む方がほぼ全員参列する前提の試算であり、香典辞退の申し出があったり、人数に応じて式場のグレードを上げる必要が出たりする場合は、この通りにならないこともあります。
それでも足りないときの最終手段:葬祭扶助制度
ここまでの方法を検討しても費用の目処が立たない場合、生活保護法に基づく「葬祭扶助制度」という公的な制度があります。生活保護を受けていない方でも、経済的に葬儀費用を負担できないと認められれば対象になることがあります。
対象になる人
制度の対象になるのは、主に次のような場合です。
- 亡くなった方、または葬儀を行う方(喪主)が生活保護を受給している場合
- 喪主が生活保護を受けていなくても、経済的に葬儀費用を負担することが困難と自治体に認められた場合
- 身寄りがなく、扶養義務者もいない場合(民生委員などが手続きを代行することもあります)
支給される金額の目安
支給額は地域の級地区分によって異なります。厚生労働省の基準(令和6年4月時点)では、次の金額が上限の目安とされています(出典:厚生労働省 葬祭扶助基準)。
| 級地区分 | 大人 | 子供 |
|---|---|---|
| 1級地・2級地 | 215,000円以内 | 172,000円以内 |
| 3級地 | 188,100円以内 | 150,500円以内 |
この金額の範囲内で、実費が支給される仕組みです。
葬祭扶助で行える葬儀の内容
葬祭扶助で行う葬儀は「福祉葬」とも呼ばれ、通夜・告別式は行わず、遺体の搬送・安置・火葬のみを行う「直葬」が基本になります。自己負担額は原則0円ですが、支給額の範囲を超える演出やオプションを追加すると、その分は自己負担になります。
申請の流れと最も重要な注意点
葬祭扶助を利用する際に最も重要なのは、必ず葬儀を行う前に申請することです。葬儀を終えてから申請しても、原則として支給を受けることはできません。
申請の流れ
- 故人の住んでいた(または喪主が住んでいる)市区町村の福祉事務所に相談する
- 生活状況を確認してもらい、対象になるかどうかの判断を受ける
- 認められた場合、指定された葬儀社(または相談の上で選んだ葬儀社)に葬儀を依頼する
- 葬儀後、費用は自治体から葬儀社へ直接支払われる(喪主が一時的に立て替える必要は原則ない)
亡くなった直後は気持ちの余裕がない時期ですが、葬儀社に依頼する前に、まず福祉事務所へ連絡することを忘れないようにしてください。
身寄りがない場合はどうなるか
引き取り手がいない、あるいは扶養義務者がいない場合は、自治体が火葬や埋葬の手続きを行います(行旅死亡人の取り扱いや、無縁仏としての合同供養につながることもあります)。この場合も費用は公的に負担されるため、遺族が費用の心配をする必要はありません。
費用がなくても、想いを形に残す方法はある
葬儀の規模や形式を抑えることになっても、故人を偲ぶ気持ちまで小さくする必要はありません。写真や思い出を映像としてまとめることは、大きな費用をかけなくても実現できます。ひととき映像では、費用を抑えた葬儀の形式に合わせたご相談も承っています。
よくある質問
- 生活保護を受けていなくても葬祭扶助は使えますか?
- 生活保護受給者でなくても、喪主が経済的に葬儀費用を負担できないと自治体に認められれば対象になることがあります。まずはお住まいの自治体の福祉事務所にご相談ください。
- 葬儀の後からでも葬祭扶助を申請できますか?
- 原則としてできません。葬祭扶助は葬儀を行う前に申請する必要があるため、費用に不安がある場合は葬儀を依頼する前に福祉事務所へ相談してください。
- 葬祭扶助を使うと、どんな葬儀になりますか?
- 通夜・告別式を行わず、火葬のみを行う「直葬」が基本になります。支給される金額の範囲内であれば自己負担は原則0円です。
- 香典を受け取れば葬儀費用は必ず黒字になりますか?
- いいえ、参列者が増えれば通夜振る舞いや香典返しといった費用も増えるため、必ず黒字になるわけではありません。ただし多くの場合、香典収入は変動費を上回るため、固定費の負担を軽くする効果はあります。
